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方針

2025年04月22日全文おこしの罠

 打合せや会議に出席した後、議事録を書いた経験は多くの方がされていると思います。時々、この議事録、会議の全文を起こす場合があります。けど、この全文おこし、使い方によってはかなりの無駄が発生します。

 最近はAIでその作業ができ、全文おこしもだいぶ効率的に行えるようになってきていますが、専門用語が飛び交う場合は、それなりの修正時間を必要とします。録音から行う場合は、もっと時間を要します。30分の打合せでも2時間、1時間の打合せなら4時間といった具合です。経験上、会議の時間の3~4倍くらい要します。

 録音から行う場合、全文おこしの作業自体は、結構大変な作業です。したがって、全文おこしを行った方は、その作業が終わった後に一種の達成感がでて、かなり仕事をした気分になります。当然の感覚です。でも、作業者には悪いのですが、果たして、そこまでして行う値打ちがあるかというと、疑問なケースの方が多いのです。

 仕事は十分やった気分になるのに、価値が小さい。結構厄介です。どういうことなのでしょうか。

 全文おこしが必要かどうか。ここにかかってきます。多くの打合せや会議は、一言一句よりも、その打合せ・会議の趣旨に沿って何がどう話し合われ、どういう結論になったのかの方が重要です。発言を残すにしても、発言者がどういう意図で発言したのかが重要です。この趣旨にそった議事録であれば、いちいち録音しなくても手元のメモをもとにして書けば十分です。直接、PCに打ち込むことでもいいでしょう。その場で打ち込んでしまえば、議事録作成にかかる時間がかなり効率化できます。

 ちなみに、録音に頼るようになると、後でその録音を確認すればよいという気持ちが生まれやすくなります。録音を確認して議事をとる分、時間的にはかなりのロスを発生させます。また、議事録作成が自身の主な役割と考える方がいたりすると、打合せに集中しないリスクが高まることもあります。これはAIに頼る場合でも同様なことが起こり得ます。
 
 打合せや会議の議事録は、できれば、その場で要点を簡潔にまとめたいところですが、これには訓練が必要です。AIや録音に頼っていると、そのスキルを磨く機会も失うことになり、いつまでたっても即座に要点をまとめることができるようにならないといったことにもつながります。

 全文おこしをする、これは必要な時のみに行うべきということになります。では、どのようなときが該当するのでしょうか。

 何を発言されたか、一言一句が重要なときです。国会答弁や裁判などがこれに当たると思います。一言一句に意味を確認されます。業務に関して言えば、例えば、規制当局との面談やヒアリングも一言一句が重要です。規制当局の方は、語句を正確に選んで発言されますので、どのように発言されたかは重要です。趣旨がわかればよい、に加えて、どの語句を使って発言したかの確認が必要になることが多いです。

 AIや録音を有効に用いることは、あってしかるべきということにはなりますが、全文おこしは、その必要性があるときのみに絞りたいです。できるだけ要点を即座にまとめる、このスキルを磨いていきましょう。



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