趣味
2024年08月20日日本酒とワインと酒の肴

ビール、日本酒、焼酎、老酒、ワイン、ウィスキー、ブランデー、ラム酒、ウォッカ等々、いろんなお酒があります。また、日本酒を例にとっても、産地によってさまざまな銘柄があります。日本酒同様、ワインもしかりです。ビールも世界的に見ればいろんな銘柄があり、のど越しを楽しむよりも口あたりを楽しむ、甘く感じるビールもあります。国内でも地ビールが流行るなど、多種多様になってきました。
さて、日本人がお酒をたしなむとき、多くの人はつまみを一緒に楽しみます。つまみというには不釣り合いな豪勢な料理が並ぶ場合もあります。この時、主はお酒でしょうか。それとも料理でしょうか。時と場合によって、お酒の方であったり、料理の方であったりすると思います。「今日、いい酒が手に入ったから一緒に飲もうよ」なんてときは主はお酒になるでしょうし、「ご馳走をふるまうからおいでよ」なんてときは料理になるでしょう。
一方、「酒の肴」とあるように、上述のような特殊な場合でなければ、日本人の感性は、酒を飲んでおいしい肴を食べるという簡単なものではないでしょうか。日本酒を選ぶときにも、料理を気にしながらこの日本酒を選ぶということは珍しく、辛口とか甘口とか日本酒そのものの味を楽しむ方が多いと思います。一般的にはお酒に料理が伴うという感覚ではないかと思います。
では、欧米で代表的なお酒であるワインはどうでしょうか。以前(といっても20年以上昔ですが)、フランスのワイナリーに寄って、たくさんのワインを身近で見て何を選ぼうか迷っていたとき(正確には、見ているだけでも楽しかったので、まずは目で楽しんでのですが)、見かねた店の主人が寄ってきました。雰囲気的に、私にどのワインがいいか助言をしにきたと感じましたが、第一声が、「今日の夕食は何だ?」でした。ワインも「酒の肴」的にとらえていた私にとっては、はっとさせられる言葉でした。料理に合わせてワインを選ぶというのが基本的な感性であり、同じ酒をたしなむ行為であっても、日本とフランスでは根底にある文化が違うのだと感じました。
その後、東京のフレンチレストランで、シェフにこの話をした際にも、シェフからは肯定する内容の返しがありました。料理に合うワインを選んで、料理もワインも引き立たせる。どの料理にどのワインが合うかは、シェフにとっても重要な事項ということになります。フルコースで料理ごとに違うワインが出てくるのもこのためです。このような文化の違いを知ると、漠然と聞いていた「魚料理は白ワイン、肉料理は赤ワイン」という言葉の理解が深まります。
料理に合うワインがあるということは、合わないワインがあるということです。経験上、刺身に赤ワインは合わないことが多いです。魚臭さが、赤ワインの渋みを強調させて、そのワインがもつ酸味や甘みを消します。焼き魚に至っては、これに合うワインはないといってもいいくらいです。淡白な味であれば白ワインなら何とかという場合もありますが、例えば、さんまやホッケなど魚臭さを伴う場合(これはこれで焼き魚としては楽しみの一つですが)、赤白関係なくワイン本来の味が消えます。日本食には日本酒が合うということの典型例と思います。
ところで、ワインは注ぐグラスによって味が微妙に変わることをご存じでしょうか。ワイングラスと一般的な形状のグラスを用意して、同じワインを注いで飲み比べをしてみてください。同じワインなのに微妙な味の違いを感じると思います(多少高めの赤ワインがいいです)。
ワイングラスの口が広がる方向の形状の場合は酸味が、口が狭まる方向の形状の場合は、渋みが感じやすくなります。前者はライトな味になりやすい、後者はヘビーな味になりやすいとも言えます。先ほどのフレンチレストランのシェフは、グラスによる味の違いを考慮し、ワインだけでなくワイングラス選びにも気を配っていました。