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時事

2025年02月25日蕎麦屋の出前

 「蕎麦屋の出前」と聞いて、その意味が分かる人は多いと思います。したがって、言葉自体にはまだ市民権があるように思います。でも、特に若い世代では、わからない、想像することもできないと言われる方が増えているかもしれません。

 「蕎麦屋の出前」とは、蕎麦屋に出前を注文してもなかなか来ない、しびれを切らして「まだですか?」と督促の連絡をすると、実際にはまだ配達に出ていないにもかかわらず「今、配達に出ました」と、その場を取り繕うような回答をすることを意味します。当然、その後も待てども待てどもなかなか配達されません。これが転じて、ビジネスの世界でも、予定よりも大幅に遅れているにもかかわらず、「今、やっているところです」「ちょうど終わりが見えてきています」のように、事実とは違うその場を取り繕う回答をすることを言います。すかさず、「蕎麦屋の出前じゃないよね」なんて返されたりします。

 この、蕎麦屋の出前、昔は本当にあった話です。でも、経験したことのある方は少なくなっているように思います。最近の宅食サービスと言えば、ピザやUber Eats、その他がありますが、そもそも、蕎麦屋に出前を頼むことはあまりありません。出前もある程度の時間内に配達しないと顧客が離れるので、待てども待てども来ないということ自体がレアになっていると思います。

 私が小中学生の頃は、出前と言えば、そば・うどん、中華そば、丼物でした。あと、ときどき寿司もありました。中華そば、最近はラーメンという語の方が使われますが、当時は、まだラーメンと言うよりも中華そばの方が親しみのある語だったように思います。メニューから見てもわかると思いますが、注文先は寿司を除けば蕎麦屋です。市内の親戚同士で集まることが比較的多かったため、皆で食事ということで、近くの蕎麦屋に出前をよく頼みました。だいたい休日のお昼の時間帯です。が、この時間帯は注文が殺到する時間帯です。店の方も出前と来客で混みあって大変な時間帯で、注文してもなかなか来ません。1時間以上待ちなんて事態も珍しくありませんでした。12時頃に電話で連絡をして(ちなみに固定電話しかなかった時代です)、12時半になっても音沙汰がない。皆を待たせているし早く来てほしい、ということで督促の電話。すると・・・「今、配達に出ています」

 でも、配達されたのは13時を過ぎたころ。ちなみに、その蕎麦屋、歩いても5~10分くらいの距離です。

 おいおいという感じですが、当時、何回かこの経験をしています。もう少し歳をとってから思ったことですが、店側にしてみれば、その場を取り繕うというよりも、「今出ました」と言う方が、注文キャンセルのリスクがなくなるので、その意味合いが強かったんだなと思います。
 
 最近は、ネットでメニューから注文できるなど、宅食サービスも便利になっています。その反面、過去に経験した言葉が、だんだんと風化して使われなくなっているように感じます。正直、寂しさを感じますが、これも時代の流れということなのでしょう。 



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