時事
2024年12月05日ノーベル平和賞

10月11日、思いがけない良いニュースが入ってきました。ノルウェーのノーベル賞委員会が、2024年のノーベル平和賞を日本全国の被爆者らでつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与すると発表したというものです。日本の個人団体への平和賞は、非核三原則の表明で1974年に受賞した佐藤栄作元首相以来で50年ぶり2例目です。
冒頭の「思いがけない」は、ちょっと失礼な言い方だったかもしれません。が、前評判があったわけでもなく、ニュースを拝見した時には、驚き半分、日本人が受賞したことへの喜び半分といった感じでした。
被団協は、米国による1954年の太平洋・ビキニ環礁水爆実験をきっかけに1956年8月に長崎市で開かれた第2回原水爆禁止世界大会の中で結成された被爆者の全国組織です。「ふたたび被爆者をつくるな」を合言葉に、核兵器廃絶と原爆被害への国家補償を訴えてきている団体です。
今回の平和賞受賞理由(骨子)は以下によります。
・被団協は核兵器のない世界の実現に向け努力
・核兵器が二度と使われてはならないことを証言を通じて示した
・被爆者の証言は世界で幅広い核兵器反対運動を生み出した
・現代の核兵器は文明を破壊しかねない
・平和に取り組んできた全ての被爆者に敬意
最近の世界情勢は、核リスクが高まっていると言えます。2022年にウクライナに侵攻したロシアは核の威嚇を繰り返しています。事実上の核保有国イスラエルと核開発を続けるイランが対立する中東情勢も緊張が高まっています。北朝鮮では核・ミサイル開発が続けられています。
こういった情勢は、核廃絶への流れが逆行していることを示しており、今回の受賞も、これに対する強い危機感が生じていることが背景にあります。広島、長崎の原爆投下から79年間「核なき世界」の実現を訴え続けてきた被爆者の活動に焦点を当てることで、高まる核リスクに警鐘を鳴らし、核なき世界に向けた機運を高める狙いもあるようです。
一方で、被爆者の平均年齢は85歳を超えているそうで、被団協のメンバーも高齢者が多く、核廃絶をどのようにこれからの世代に引き継ぐかは課題になっているとのことです。平和を維持するためにも将来にわたって核兵器は作らない・持たないを目指すべきは、論を待たないことと思います。
我々、原子力業界に携わる者は、核燃料物質等に接する機会があります。原子力は平和利用が根本です。3S(Safety、Security、Safeguards)を実践し、安全に平和に事業を進めていくことが求められます。時折、核兵器と平和利用を混同される方がいて、そのたびに悲しく悔しい思いをしますが、3Sを実践する中で、それを払拭していくことも我々の使命の一つです。