方針
2024年11月19日セーフティⅠとⅡ

原子力の世界は、安全と切っても切れない関係にあります。事業の継続は大事ですが、安全の確保が大前提です。
安全確保の考え方、QMS(品質マネジメントシステム)に則った考えに基づいています。安全を確保できるように計画を整え、実施し、実施状況を評価して計画にフィードバックする、いわゆるPDCAをベースとしています。その過程で不適合が発生すれば、迅速に処置するとともに(不適合の除去)、再発を防止します(是正処置)。
安全に向けた努力は、実態として、主に「何が悪かったのか?」に焦点があてられることが多いと思います。実際、「なぜうまくいかなかったのか?」ということを説明するための数多くのモデルが考案されています。原因を見つけるための方法論として根本原因分析(RCA)がありますが、RCAはそのモデルの典型例です。この考え方はセーフティⅠと呼ばれます。規制当局が、重大な不適合に対して報告を求めますが、これもセーフティⅠの考え方に則っていると言っていいでしょう。
しかし、複数の組織が関与し、いろいろな要因が重なり複雑化した現代のシステムでは、この考え方だけでは、間に合わなくなってきています。そこで、セーフティⅡの考え方が唱えられています。うまくいかなかったときではなく、通常、うまくいっているときに焦点を当てる考え方です。なぜ、うまくいっているのか。根底には、安全の確保には、人間の熟練であったり、その時々の工夫であったり、必ず人間の活動が関与しており、こちらにも焦点を当てるべきとの発想があります。
セーフティⅠでは、例えば、千回に1回のトラブルだった場合、その1回に着目することになりますが、999回のうまくいった事象に対してはほとんど無視される事態が発生します。
セーフティⅡの考え方では、失敗を特別なものとして扱うことを避け、日常的なパフォーマンスの変動としてとらえます。何かがうまくいかなかったときに、その失敗だけを説明する特定の原因を見つけるよりは、通常はなぜうまくいっているのかを最初に理解するべきといった考え方です。うまくいくことは当たり前ではないという発想になります。
当社も、毎日のエンドミーティングで、今日はどこが(なぜ)うまくいったのか、よかったところはどこか、といった視点での会話をするよう推奨し、これを記録に残すようにしています。また、不適合が起点ではありましたが、マニュアルに対する「暗黙知」を具体化する活動も行っています。これらは、セーフティⅡの考え方に基づく活動の展開です。
日ごろ、当たり前のように行っている業務も、なぜ当たり前のようにできているか、時々、チームで話し合ってみても面白いかもしれません。チームで当たり前だと思っていた所作を改めて認識するいい機会にもなるように思います。実はこんな工夫を(さりげなく)していたということがあれば、他チームに展開できたらさらに素晴らしいです。