方針
2025年01月30日足し算と引き算

足し算と引き算といっても、小学校の算数の話ではありません。会社ではチームで仕事をしますが、チームやメンバーの評価を足し算でやるのか、引き算でやるのかということです。でも、どういうことなのでしょうか?
ここまでやるべき、こうあるべき、いわゆるあるべき姿や目標、即ち到達点を基準にするとき、その評価は引き算になります。基準となる到達点に対して、今がどのくらい足りないか、その差を評価することになるからです。
業務の目標に対する評価は、多分に引き算です。基準となる目標に対して、その差を認識し、どのようにしたらその差を埋められるか。チームで検討して対策を立て、実行します。実行して評価してまた実行する、いわゆるPDCAはこれに該当します。
業務の評価ではなく、個人の評価の場合はどうでしょう? 個人の業績の評価は同様に引き算でしょうが、個人がいかに頑張ったか、その振る舞いまで引き算でしょうか?
個人の評価は、何も、期中や期末の業績評価だけではありません。実は、この評価は、皆さんの頭の中で日常茶飯事的に行われています。上司側からすれば、「こんなこともできないのか」「もっと努力してほしい」、部下側からすれば「もっとこの点も面倒を見てほしい」「もっと優しく接してほしい」等、だいたい、こんな具合です。各人の中に経験などに基づく評価基準があり、その基準に基づいて評価することが多いのではないでしょうか。これは、引き算の評価です。その差が時にはフラストレーションになって表情や行動に現れます。
でも、引き算の評価ばかりだと、それが達成されないと褒められません。日ごろから、厳しい言葉のやり取りになり、エスカレートするとお互いに感謝の言葉さえも生まれません。辟易してくる人もでてくるでしょう。昭和の時代は、これが当たり前だったように思います。しかし、引き算の評価ばかりでは、優秀な一部の人間はさらに優秀になるかもしれませんが、中堅の方々にあってはその苦労に絶えられない方が出てきます。いろいろな知恵の結集を必要とする令和の時代には適さないばかりか、メンタルでの体調不良者を出したり、退職につながったりします。
足し算の評価、これは基準を今現在の状態に置くことです。がんばった分だけ、今の状態より進みます。この進んだ状態を評価します。今よりどれだけプラスかを評価しますので足し算の評価です。
目的が基準になる業績は別として、各人の日常の態度や頑張りに対しては、概して、足し算の評価の方が望ましいです。皆さんが(日常に無意識的に)行う個人の評価の場合でも、足し算の評価の方が、がんばってもらった分だけ、労いや感謝の言葉が出やすくなります。やっている方も褒められる機会が増えます。引き算の評価がどちらかというと否定から入ることが多いのに比べて、足し算の評価は肯定から入りますから、やる気ややりがい人もつながりやすいです。雰囲気もよくなり、チームワークもいい方向に作用します。
でも、足し算の評価、これが結構難しいです。前述の通り、多くの人は往々にして引き算の評価をしています。これを変える必要性が出てきます。評価者は、その時点で(自らが持つ)基準に達していなくても、気長に接することが求められることになりますが、これが結構な忍耐力を必要とします。短気な方やせっかちな方はなお更です。日常からの訓練が必要になります。訓練の途中では、今までの引き算の評価に基づく態度が往々にして出てしまいますから、「またやってしまった!」この連続です。でも、訓練すれば足し算の評価から入れるようになります。
また、足し算の評価も行き過ぎると不具合を起こすので注意が必要です。目標や基準に到達していないのに褒めてばかりだと、褒められた方は、それに達しなくても頑張ればいいんだと錯覚します。不十分な人材育成に繋がります。「ここはありがとう。いい感じ。あとは、ここがもう少しできるようになるといいね」というように、それまでの結果や振る舞いは褒めても、目標や基準(到達点)は常に意識させるようにする必要があります。
足し算と引き算、うまく併用することが大切です。